投稿日:2023年8月29日/更新日:2024年3月22日
水溶性食物繊維はイヌリンやペクチンなど、水に溶けやすい食物繊維の総称です。
腸内で糖やコレステロールの吸収を抑える働きがあるため、健康的な成分として注目を集めています。
水溶性食物繊維はいくつかの食品に含まれているため、食事からでも摂取は可能です。しかし、食事を介しての継続的な摂取は難しいケースもあるため、そのような場合にはサプリメントを服用するのがおすすめです。
本記事では、水溶性食物繊維の種類や健康効果、含有量の多い食品について解説していきます。水溶性食物繊維について知りたい方には役に立つ内容となっていますので、ぜひ参考にしてみてください。
水溶性食物繊維とは、食物繊維のうち、水に溶けやすいものの総称です。
食物繊維には大きく分けて不溶性・水溶性の2種類のものがあり、このうち水溶性に分類されるものが、水溶性食物繊維となっています。
水溶性食物繊維はヒトの消化酵素では分解されにくい水溶性食物繊維を指します。分解されにくいために、食物繊維としての効果を発揮するのです。
水溶性食物繊維は水分を含むことでジェル状に変化する性質があり、ジェル化した食物繊維が腸内において食物の移動を促しや余分な栄養素の吸収を緩やかにする作用があります。そのため、食前の摂取によって、糖やコレステロールの吸収を抑えられるなどの健康効果に期待できます。
最近ではサプリメントも多く販売されており、摂取需要が高まっている成分の1つです。
水溶性食物繊維にはさまざまなものがありますが、大きく分けると高粘度のものと低粘度のものに分けられます。高粘度のものについてはペクチンが、低粘度のものについては難消化性デキストリンが有名です。
そのほか、水溶性食物繊維にはさまざまなものが知られており、それぞれで特徴や含まれる食材などが異なっています。
ペクチンや難消化性デキストリンなど、おもな水溶性食物繊維の特徴は以下の通りです。
成分 | 特徴 | 含まれる食材 |
ペクチン | 粘度が高いため、増粘剤やゲル化剤として利用される。ジャム加工に利用されるケースが多い。 | りんごや柑橘類などの果物(果皮に多い) |
難消化性デキストリン | 消化酵素アミラーゼに対して難消化性を示す。低粘度でわずかに甘味を有するのが特徴。特定保健用食品の関与成分として認可されている。 | とうもろこしなど |
イヌリン | 腸内細菌に利用されやすく、腸内フローラを改善しやすい。 | チコリやゴボウ、タマネギなど |
アルギン酸 | アルギン酸ナトリウムと呼ばれることも多く、増粘剤やゲル化剤として利用される。 | 昆布やわかめなどの海藻類 |
難消化性オリゴ糖 | オリゴ糖の1種で、消化酵素で分解されにくい。フラクトオリゴ糖やガラクトオリゴ糖などが知られている。 | バナナやタマネギ、牛乳など |
水溶性食物繊維のおもな健康効果は、以下の3つです。
水溶性食物繊維はコレステロールを体外に排出するほか、血糖値上昇を抑える効果もあるため、生活習慣病を予防するうえで有益な成分といわれています。また、腸内細菌の餌にもなるため、腸内環境を整えるうえでも効果的な成分です。
ここでは、これら水溶性食物繊維の健康効果について詳しく解説していきます。
水溶性食物繊維の効果の中で有名なものが、コレステロールを体外に排出する効果です。
水溶性食物繊維は小腸でジェル状になるため、その粘着性によってコレステロールを吸着し、体外へ排出する作用があります。
また、同時に胆汁酸を排出する作用もあるので、摂取すると肝臓での胆汁酸合成が活発になります。胆汁酸はコレステロールを原料に作られるので、その合成量の増加はコレステロールを消費するうえで効果的です。
このように、水溶性食物繊維にはコレステロールの排出と消費を促す作用があるため、摂取すると血中コレステロール値を改善できる可能性が示唆されています。
水溶性食物繊維は、血糖値上昇を抑える成分としても有名です。
先ほど説明した通り、水溶性食物繊維は小腸でジェル状になりますが、その粘着性には糖を吸着する作用があると報告されています。そのため、水溶性食物繊維の摂取は、糖の排出を促すうえでも効果的です。
また、水溶性食物繊維の粘着性には食物の動きをゆっくりにする働きもあり、糖の吸収速度を緩やかにできる可能性が示唆されています。糖の吸収速度を緩やかにできると、血糖値が上昇しにくくなるので、食後血糖値の急激な上昇も抑えやすくなります。
このように、水溶性食物繊維は糖の排出を促進し、吸収速度を緩和する作用も確認されているので、最近では糖尿病予防に役立つ成分として注目されるケースも少なくありません。
水溶性食物繊維は腸内環境を整える効果があるのも1つの特徴です。
水溶性食物繊維は大腸で腸内細菌叢に発酵されると、酢酸や酪酸、プロピオン酸などの短鎖脂肪酸に変換されます。短鎖脂肪酸はビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌を増やす作用があり、腸内フローラの改善に役立つ成分の1つです。
そのため、水溶性食物繊維を摂取すると腸内細菌のバランスが整えられ、整腸効果が期待できます。
イヌリンなどの腸内細菌利用率の高い水溶性食物繊維は、短鎖脂肪酸を増やしやすいので、整腸効果を求める場合にはこのような成分を摂取すると効果的です。
ちなみに、短鎖脂肪酸には腸の蠕動運動を活発にする作用もあるので、便秘などの症状を改善する効果も期待できます。
水溶性食物繊維を多く含む食品にはさまざまなものが知られていますが、ここではいくつか代表的なものを紹介していきます。
食品 | 水溶性食物繊維の含有量 (可食部100gあたり) |
大麦(押麦・乾) | 4.3g |
えん麦(オートミール) | 3.2g |
さつまいも(皮付き・生) | 0.9g |
糸引き納豆 | 2.3g |
ゴボウ(生) | 2.3g |
西洋かぼちゃ(生) | 0.9g |
大根(皮なし・生) | 0.5g |
オクラ(生) | 1.4g |
レモン(生) | 2.0g |
キウイフルーツ(緑・生) | 0.6g |
バナナ(生) | 0.1g |
生しいたけ | 0.4g |
アーモンド(いり・無塩) | 1.1g |
上記の表から分かるように、水溶性食物繊維を多く含む食品は、穀物からいも類、大豆、野菜、果物、キノコ、ナッツ類に至るまで、幅広く存在しています。水溶性食物繊維を食事から摂取する場合には、これらの食品を積極的に取り入れるとよいでしょう。
主食の種類を変えたり、水溶性食物繊維の豊富な副菜を一品加えたりするだけでも、水溶性食物繊維は効率的に摂取しやすくなります。
ちなみに、オートミールやアーモンドなどには不溶性食物繊維も豊富に含まれているので、水溶性・不溶性の両方の食物繊維を摂取する場合には、これらの食品を食べるのがベストです。
水溶性食物繊維は食事からでも摂取できますが、効果を得るためにはまとまった量を摂取する必要があるため、上記のような食品を毎日取り入れるのは、なかなか難しいケースもあるでしょう。
そのような場合には、サプリメントで摂取するのもおすすめです。
サプリメントであれば負担なく成分を摂取できるので、毎日でも手軽に水溶性食物繊維を摂取できます。最近では難消化性デキストリン、イヌリンなどの機能性表示食品としてのサプリメントも多くリリースされているので、そのような製品を服用するとより効果を期待できます。
また、無味無臭で色んな食事に混ぜられるタイプのものや、ドリンクタイプのものも販売されているので、そのような製品から摂取するのも1つの方法です。
ただし、水溶性食物繊維は摂取量が多くなると、お腹を緩くしてしまう可能性もあるため、その点については注意が必要です。
水溶性食物繊維を摂りすぎると、以下のような悪影響が生じる可能性もあります。
このように、水溶性食物繊維の摂りすぎは逆効果にもなりかねないので、過剰摂取には注意が必要です。
ただ、現状では男女ともに食物繊維は不足傾向にあるため、むしろ意識して摂った方がよいともいえます。
食物繊維の摂取目標量は、18〜64歳において、男性で1日あたり21g(水溶性7g)以上、女性で1日あたり18g(水溶性6g)以上なので、この量を目安に摂取するとよいでしょう。
食物繊維は水溶性、不溶性のどちらか一方に偏ると、片方の効果が強く出すぎてしまう恐れがあるため、両方の食物繊維をバランスよく摂取することが大切です。
水溶性食物繊維は糖やコレステロールの吸収を抑えたり、腸内環境を整えたりなど、多くの健康効果が確認されている成分です。
食品に含まれていることもあるため、食事からも摂取できますが、継続的に摂取する場合にはサプリメントを服用するのがおすすめです。
Held(ヘルト)では、最新ニーズやトレンド、お客様のご要望に合わせ、さまざまな機能性原料を用いたOEM・ODMサービスを展開しています。
商品開発をお任せいただける場合には、企画から製造、販売まで、一貫したトータルサポートも可能です。
水溶性食物繊維を配合した製品はもちろん、機能性表示食品についても対応可能ですので、これらに関わる独自製品の販売を検討している場合は、お気軽にお問い合わせください。
《記事監修:千葉 大成 管理栄養士・博士(生物環境調節学)》
管理栄養士、博士(生物環境調節学)、専門は栄養生理学 千葉 大成
東京農業大学大学院博士課程修了後、国立健康栄養研究所、大学研究機関で、食と健康に関わる研究活動および教育活動に18年携わってきました。研究活動としては、機能性食品素材に着目した骨粗鬆症予防に関する研究を主に行ってきました。一方で、教育活動の傍ら、地域貢献セミナーや社会人教育にも携わってきました。
そういった研究・教育活動から疾病をいかに予防するかを考えるようになりました。つまり、薬剤で“病気にフタ”をすることで病気を抑えることよりも生活習慣(食事、運動、サプリメント)で“病因を流す”ことによって疾病を予防していくことを積極的に働きかけていきたいと考えるようになりました。
2000年東京農業大学農学研究科博士後期課程修了後、2018年まで大学教育研究機関で主にフラボノイドによる骨代謝調節に関する研究に従事した。