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投稿日:2025年3月1日/更新日:2025年3月3日
紫外線が原因の日焼け対策には日傘やUVカットウエアなどの服装やスキンケアによる対策がよく知られていますが、「飲む日焼け止め」といわれる体の内側から日焼け対策を行うことも有効な対策の1つです。
昨今では、美容は外側からのケアだけではなく、内側からのケアも需要であることが一般的となってきており、飲む日焼け止め製品も認知が進み、大きな市場が形成されています。
それに伴い、さまざまな製品が上市され、その成分や特徴も各社さまざまです。
今回は、代表的な成分の特徴と共に、飲む日焼け止めの効果について解説していきます。
目次
紫外線にはA波(UV-A)とB波(UV-B)の2種類があります。B波は真夏に最も量が多くなり、肌にダメージを与え、シミの原因となります。
一方、A波は紫外線の中で最も波長が長く、肌の深部まで到達してしまい、ハリや弾力のもととなる線維芽細胞を破壊し、シワやたるみの原因になると言われています。
下記の図からわかるように、A波は春先である3月から一気に増加し、5月には、夏とほとんど変わらない紫外線量になることは意外に知られていないことです。
すなわち、肌を守るには、この時期から対策をすることが大切です。
国立環境研究所 地球環境研究センター
2010-2012年 つくば局観測データ
日焼けは紫外線によって引き起こされるというのが一般的であり通説で、大人から子どもまで、知らない人はほとんどいないことでしょう。
しかし、紫外線を浴びてから、肌で日焼けが引き起こされるまでのメカニズムを詳しく知っている方は少ないかもしれません。
すなわち、効果有効的な日焼け対策実施するにはそのを考えるためには、日焼けのメカニズムを知ることが非常に重要です。
日焼けは2つに大別されには2つの分類があり、紫外線(太陽光)の影響で肌が炎症によって赤くなる「サンバーン」と、その後に時間をおいて黒くなる「サンタン」です。
特に、肌の光老化と関連性が強いサンタンは、肌の奥まで到達してしまうUV-Aを浴びることが主な原因といわれています。
通常UV-Aを浴びると、皮膚の中のメラノサイトという細胞内でメラニン色素とよばれる色素が働き、紫外線が肌の奥深くまで届くことを防いでくれます。
しかし、このメラニン色素には肌を褐色に変化させる作用もあり、長期的に蓄積され肌細胞に残ることでとシミの主な原因となるため、本来、肌を守っているはずのの防御成分であるメラニンが美肌には悪者として扱われることも多々あるのです。
肌の老化の80%は紫外線による光老化であるといわれています。前述したように、UV-Aなどの波長の長い紫外線は肌の奥まで届きます。
真皮まで届くと、肌の構成因子であるコラーゲンやエラスチンなどを変性させます。すなわち、シワやたるみの原因を作り出し、肌の老化を促進してしまいます。
中でも、エラスチンは、一度崩れると再生に長い時間がかかるといわれています。さらに、UV-Aは地表に降り注ぐ紫外線の9割を占めており、波長が長いため、曇や窓ガラスを突き抜け、不織布のマスクも通り抜けるのではないかと考えられています。
そのため、日焼け予防を考える上で、紫外線を浴びてしまわないように外側からの工夫を行うことと併せて、飲む日焼け止めなどの内側からのインナーケアを行うことが大事になります。
紫外線によってメラニンが過剰に生成されることは、肌が褐色化してしまう原因や、シミを作り出す原因となってしまうため、飲む日焼け止めサプリメントの多くには過剰なメラニン生成を抑制する機能のある成分が配合されています。
ところで、メラニンは、メラノサイトという細胞内にて、チロシンがチロシンキナーゼによりドーパキノンとなり、ドーパキノンがメラニンになるという順序で生成されています。
これに対応した成分として、チロシンキナーゼに阻害作用のある成分や、メラニンをドーパキノンに戻す作用のある成分などがあり、現在、さまざまな成分を配合した飲む日焼け止めが展開されています。
具体的に飲む日焼け止めに配合したい成分として、以下のような原料があります。
美白効果のイメージが強いビタミンCには、メラニンの生成を促進するチロシンキナーゼを阻害する作用があり、メラニンの成分を抑制する効果が期待されている成分です。
できてしまった黒色メラニンを淡色メラニンにする作用もあるといわれています。
また、メラニンの生成は、酸化ストレスによっても促進されるため、活性酸素の影響を受けます。しかし、ビタミンCには高い抗酸化作用があるため、活性酸素の影響を防ぐことができます。
ビタミンCを過剰に摂取しても、対外に代謝されてしまう成分です。最近ではそのようなビタミンCの弱点を補うの加工がされたリボソーム型ビタミンCを使ったサプリメントも販売され始め、注目を集めています。
特に日焼け後は1000mg/日を目安に摂取するのが良いでしょう。傷んだ皮膚の再生にはビタミンAもとても大切な役割を果たすので、緑黄色野菜やサプリメントでビタミンAを補給することも大事です。
セラミドには、肌の保湿機能・バリア機能を高める効果やメラニンの生成抑制効果があります。肌の水分が不足していたり、バリア機能が低下したりしている状態では、紫外線によるダメージを受けやすいです。
そのため、セラミドを摂取してバリア機能を高めておくことで、紫外線に対抗する肌の状態を作り出すことができます。
グルタチオンは肝臓や細胞でも産生されるトリペプチドで、チロシンキナーゼを阻害することによりメラニンの生成を抑制する作用があります。
さらに、ドーパキノンを赤色メラニンに変換させる作用もあることで有名です。これにより、ドーパキノンから黒色メラニンを生成する量を減らして、肌の褐色化を防ぐことが期待されています。
体内で様々な役割を果たしている強い抗酸化成分でアンチエイジングや肝臓ケアにも活用できる成分です。
シダ植物から抽出されるエキスには、高い抗酸化作用や抗炎症作用があるといわれています。
活性酸素を除去することにより、メラニンの生成や炎症を防止し、日焼けによる肌の赤み(サンバーン)を防ぐことが期待されています。
強い紫外線にさらされるフランス海岸に生育する松の樹皮から抽出したエキスには、非常に高い抗酸化作用と抗炎症作用があるといわれています。
さらに、経口摂取により肌の水分量やバリア機能を高めることが確認されており、紫外線からのダメージを防ぐことが期待されています。
厳しい寒さのシベリアに生育するカラマツから抽出したエキスには、ケルセチンなどのポリフェノールが豊富に含まれており、メラニンの生成を抑制する作用があるといわれています。
また、抗酸化作用も高い素材のため、美白効果が期待されています。
エラスチンとは皮膚や血管など弾力性のある組織に含まれているタンパク質で、体の弾力性や肌のハリを形成するのに役立っています。
紫外線によるダメージで真皮にあるコラーゲンやエラスチンが障害されて変性を起こすと、シワやたるみなどの肌の印象を老けて見せてしまう原因となります。
エラスチンは、肌の弾力を維持する機能をもっており、コラーゲン・ヒアルロン酸と共に肌の真皮の主要構成成分の1つです。
若い時には気にならなかった肌のハリ感が年齢とともになくなっているように感じるのは、エラスチンが、加齢によって年々減少していく傾向にあるからです。
エラスチンは、魚から摂取することが可能ですが、サプリメントから効率よく摂取することが可能な成分です。
エラスチンは、肌にハリや弾力を与える効果があるのはもちろんですが、全身の血管や関節の靭帯に含まれその弾力を司る重要な成分でもあるため、高齢の方に向けた関節ケア製品や、消耗の激しいアスリート向けの製品、女性のバストアップ製品などへの配合もされている成分です。
紫外線対策として、日焼け止めクリームだけでなく、飲む日焼け止めのサプリメントの市場が形成されるようになりました。
日焼け止め効果のある成分もご紹介した原料だけなく、たくさん市場に出回っているなか、配合による差別化が重視されるようになっています。
ご自分のニーズに合わせて、美白・美肌効果の高い、差別化した飲む日焼け止めサプリメントで早め早めの予防策を講じたらいかがでしょうか?
管理栄養士、博士(生物環境調節学)、専門は栄養生理学 千葉 大成
東京農業大学大学院博士課程修了後、国立健康栄養研究所、大学研究機関で、食と健康に関わる研究活動および教育活動に18年携わってきました。研究活動としては、機能性食品素材に着目した骨粗鬆症予防に関する研究を主に行ってきました。一方で、教育活動の傍ら、地域貢献セミナーや社会人教育にも携わってきました。
そういった研究・教育活動から疾病をいかに予防するかを考えるようになりました。つまり、薬剤で“病気にフタ”をすることで病気を抑えることよりも生活習慣(食事、運動、サプリメント)で“病因を流す”ことによって疾病を予防していくことを積極的に働きかけていきたいと考えるようになりました。
2000年東京農業大学農学研究科博士後期課程修了後、2018年まで大学教育研究機関で主にフラボノイドによる骨代謝調節に関する研究に従事した。