Column
投稿日:2024年10月1日/更新日:2024年9月27日
小林製薬社の「紅麹」サプリメントの摂取によって健康被害が生じた問題ですが、麹(こうじ)という名称から、一般に醸造で使われる「麹菌」と混同し、過剰に不安視する方々がいらっしゃいます。
まず、最初にはっきりしておきたいのは、紅麹菌も麹菌も悪い成分ではありません。さらに、麹菌は無毒に鈍化しており、健康を害することは絶対にありません。「紅麹」に「麹」の文字が含まれるため、同類のものとして混同されていることや、根本的な情報の少なさがそのような不安を感じるものと考えています。
日本の食文化に古くから利用されている麹菌は、「アスペルギルス・オリゼー」いうカビ菌で、醤油や味噌、日本酒、焼酎、その他の醸造酒などを製造する際に重要です。
一方、紅麹をつくるのに使われる紅麹菌は、「モナスカス属」に分類されるカビ菌で、前述した麹菌とは生物学的に全く違います。
麹菌は鎌倉時代から培養され時代に伴い、良質な麹菌を育てる技術が確立してきました。
すなわち、長い年月をかけて毒性のあるカビ菌は排除され、良質な麹菌のみを継代して安全性を維持されてきた歴史があります。
純粋培養した麹菌は、野生のコウジカビとは全く異なる「商品」であり、現代でもその安全性が高められています。
一方、紅麹菌は、主に中国・台湾で紅酒や老酒を造るのに利用され、日本では沖縄の伝統食「豆腐よう」にも使われています。
紅麹菌を使って作られた酒や食品もまた、長い食経験により安全性が認められてきたカビ菌です。加えて、紅麹は着色料としてもポピュラーに使われています。
今回問題になっている紅麹は何かの製造過程で、悪い成分が混入してしまい、紅麹と同様に生育に適した培養条件下、一緒に増えてしまったと考えられます。
従って、ふたつのカビ菌を混同してはいけませんし、それよりも単純に「紅麹=悪者」、「麹も紅麹に似た字=悪者」ではありません。
それぞれの麹という文字だけで同一と見ず、その中身の情報もしっかり見据えることが大事かと思っています。