Column
投稿日:2024年8月1日/更新日:2024年7月30日
●はじめに
妊娠・授乳中において、妊娠前に摂取していたサプリメントを摂取してよいか悩むママも多いかと思います。
ダイエット目的の商品や女性ホルモンのバランスに関わる成分を配合したサプリメントなど、積極的にはおすすめしていないものもあります。
ところで、サプリメントとは栄養補助食品とも呼ばれ、普段の食生活で補えない栄養素を補うための食品です。
妊娠前から食事のバランスに気を付けて食生活を送られている妊婦・授乳中のママならば、無理にサプリメントを使用する必要はありません。しかし、赤ちゃんの発育のために必要な栄養素の摂取を気にされるママが多く、実際に約75%の妊婦の方は何らかのサプリメントを使用している報告もあります。
妊娠中に不足しがちな重要な栄養素としてカルシウムと鉄があります。共に赤ちゃんの身体を作るのに重要な栄養素で、母体も不足することによって骨粗鬆症や貧血の可能性が高くなります。
妊娠中の鉄は、初期で+2.5mg/日、中期以降で+9.5mg/日が推奨されています。妊娠すると、赤ちゃんの成長やママの循環血液量の増加などに伴い必要量が増加するためです。
また、鉄には、動物性食品に多く含まれるヘム鉄と、植物性食品に多く含まれる非ヘム鉄があります。ヘム鉄の方が吸収率が良いと言われていますが、摂取する鉄の大半が非ヘム鉄であるため、鉄の吸収率をあげるにはビタミンCも摂取すれば、非ヘム鉄の吸収率が良くなります。
一方、カルシウムは、本来妊娠中にプラスするミネラルではないですが、妊娠時には注意が必要です。普段からカルシウムの推奨量をきちんと摂取できていればいいのですが、20~40代女性のカルシウムの平均摂取量は、推奨量よりも100~150mg/日程度不足していると言われています。
したがって、普段の食生活のままで妊娠しますと、必要なカルシウムがさらに不足するので、カルシウムもサプリメントで摂取するとよいと思われます。
さらに、カルシウムはビタミンDと摂取することで、カルシウムの吸収率を上げます。ビタミンDは食事からの摂取だけでなく、日光浴でも作られるので、少しの時間のお散歩などもおすすめです。
ビタミンAは、妊娠中・授乳中の摂取に注意が必要です。妊娠初期に過剰に摂取すると、赤ちゃんに先天異常が起きる可能性があると言われています。
うなぎやレバーなどに多く含まれているので、妊娠を希望する場合や妊娠初期は、毎日続けて食べ過ぎないように注意しましょう。(全く食べてはいけませんという意味ではありません)
また、ビタミンAには、植物性と動物性があります。植物由来は、必要時にβ-カロテンから変換されて作られるため、過剰摂取を心配する必要はないでしょう。
さらに、妊娠後期には赤ちゃんもビタミンAを必要とするため、ビタミンAの摂取推奨量が増えてきます。普段の食事で、β-カロテンを多く含む緑黄色野菜で補うようにしましょう。
次に、薬効が期待されるハーブ類は、スパイスとして使う程度なら大きな問題はなくても、サプリメントとして大量にとることで影響が出る可能性があります。赤ちゃんの体へ直接影響するのではなく、子宮の収縮などの作用によって、早産のリスクが高くなると言われています。
妊娠中の危険が報告されている代表的な成分は、アロエ、サラシア、ダミアナ、モリンガ、フィーバーフューなどです。さらに、女性ホルモン様物質を多く含むフィトケミカル成分も注意が必要です。
女性ホルモンを補う成分として有名なものとして、ブラックコホシュ、レッドクローバー、プエラリア、大豆イソフラボン、チェストツリーなどがあります。ハーブ類や女性ホルモン様作用をする原料は妊娠中・授乳期において、注意が必要なので避けたほうが良いと思います。
特に、妊産期は、女性ホルモンのバランスが急激に変わり、妊娠4~7週は胎児の器官形成期で、とても繊細なバランスの時期です。
したがって、自分の体の力を信じ、そのバランスを邪魔しないように摂取を控えるようにしましょう。
また、授乳中の方はセントジョーンズワートを含有しているサプリメントによって、ママから赤ちゃんへ母乳を介して眠りすぎてしまうことがあります。
さらに、大豆イソフラボンを含有するサプリメントはホルモンバランスに影響して母乳にも影響を及ぼすといわれています。(日常摂取する食事由来のイソフラボン量は問題になりません)
この様に妊娠中にサプリメントで取るべき栄養素は、カルシウム、鉄、葉酸が考えられます。
サプリメントは医薬品ではなく食品として扱われるため、その品質管理、体への吸収の良さ、安全性等には規定がありません。
そのため、鉄等はほとんど吸収されない(10%程度の吸収率)サプリメントもあるとされています。また、マルチビタミンの場合、ビタミンAの過剰摂取は赤ちゃんへの影響が危惧されており、注意が必要です。あくまで補助食品という意味で、食事のバランスと合わせて考えて頂きたいと思います。
ところで、サプリメントをのむときは、水か白湯がおすすめです。他の飲み物だと吸収が阻害される可能性もあるので、注意しましょう。
最後に、サプリメントは薬ではありませんが、前述したような妊娠中や授乳中に注意しないといけない成分もあります。薬のような副作用やアレルギーがないわけではありません。
体調が悪くなったときはすぐに使用を中止し、医師や薬剤師などの専門家に相談して、上手に活用することが大切です。