イミダゾールジペプチド

Imidazole peptide

   

投稿日:2022年3月16日/更新日:2024年3月22日


イミダゾールジペプチドは、疲労回復に効果のある成分として広く知られています。
日本では疲労回復系の食品やサプリメントは昔から一定の需要があり、ウナギなどの食品や、にんにくまたはスッポンなどのサプリメントが思い浮かびやすいのではないでしょうか。

近年、疲労のメカニズムが少しずつ解明されてきており、それに対応した健康食品商材が増えはじめています。
今回は疲労回復商材のなかでも、特に有名なイミダゾールジペプチドの正体に迫ります。

 

疲労の正体を暴く。疲労のメカニズムとは

 

疲労を感じている女性

 

皆さんはどのようなときに疲労を感じていますでしょうか。
仕事終わり、激しい運動後、身体や精神的に負担のかかる作業をした後など、人によってさまざまな理由で疲労を感じていると思います。

そして疲労を感じたら、休憩を取ったり、リラックスできる趣味や遊びに没頭したり、十分な睡眠を摂ったりと、その対処法も十人十色でしょう。
日本疲労学会の定義によると「疲労とは過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態である」とされています。

つまり、疲労は「これ以上、仕事や運動、作業などを続けたら、身体に害が及ぶ」という、身体の内側から発せられたサイレンであり、当然これを無視し続けることは重大な事故や病気の原因となります。

そのため、日常で感じている疲労をないがしろにせず、正しく向き合って対処することは、非常に重要です。

 

疲労には、肉体的なものや精神的ものなど様々あります。そのなかでも肉体疲労の主な原因は、筋肉疲労によってエネルギーが不足することや、疲労物質が蓄積されることにあります。
激しい運動を繰り返すことで起きやすいもので、例えば肉体労働やスポーツのあとに起こるイメージがわきやすいですが、実はデスクワークによる眼精疲労なども肉体的な疲労の1つです。

その他に近年では、自律神経中枢の消耗による精神的な疲労も注目されています。

自律神経中枢は、身体の生命活動の維持のための様々な働きを担っていますが、特に激しい運動や集中した作業などの通常の生活よりも肉体や精神的な活動が活発化した際に、自律神経中枢は身体の恒常性を保って生命活動を維持するための働きを通常よりも活発に行っています。

そして、その活動のエネルギーを産生するために、大量の酸素を必要としています。なお、大量に使用された酸素によって、活性酸素が過剰に作り出され、自律神経中枢を障害します。
これが連続的に繰り返されことによって、「疲労を感じる」といったことが、疲労の主なメカニズムとして、一般的にいわれています。

昨今では、「コロナ疲れ」という言葉が使われるようになりましたが、これも普段と違うライフスタイルを強いられて、自律神経中枢が通常よりも消耗されやすくなっているのかもしれません。

元来、日本人は疲労を溜めてすぎてしまう傾向にあるといわれています。
さらには、疲労を感じても無理しなくてはいけないと考える文化傾向もあるのではないでしょうか。

実際に、1999年の当時の厚生省の調査によると、日本人の3人に1人は慢性疲労に悩んでいるという結果がでています。
このような背景もあり、日本では昔から、疲労回復のためのニーズが存在し続けております。

具体的には銭湯でのサウナや、リラクゼーションマッサージなどの疲労を回復させるための施設やサービス、他方、健康食品ではスッポンやマムシなどの活力系ドリンクや、にんにくサプリメントのように疲労の回復を訴求した製品が長く愛用され続けていることから伺えます。

文献:厚生省特別研究事業:疲労の実態調査と健康づくりの ための疲労回復手法に関する研究:平成 11 年度研究業 績報告書.2000

渡り鳥パワー 疲労回復成分“イミダゾールジペプチド”

イミダゾールジペプチドが豊富な渡り鳥

イミダゾールジペプチドは、渡り鳥が1万キロ以上もの長距離間を不眠不休で飛び続けられるメカニズムを研究する過程でみつけられた成分で、今から100年以上前の1900年には発見されていたといわれています。

イミダゾールジペプチドは、上述のとおり長距離を飛んで移動する渡り鳥や、24時間泳ぎ続けるマグロやカツオなどのような、長時間の連続運動が必要な生物の筋肉中に豊富に含有されている成分です。

渡り鳥などの鳥類では、羽の付け根の筋肉に、マグロやカツオなどの回遊魚には、尾びれの付け根の筋肉に豊富に含まれているといわれています。
つまり、その動物の種類によって、最も消耗の激しい部位に集中して含有されているわけですが、人間では主に自律神経中枢に豊富に存在していることがわかっています。

イミダゾールジペプチドは、2つのアミノ酸が結合されたジペプチドという構造をしています。

人間が経口にて、体内に摂取したとき消化管にて吸収された後に、これらの結合が分解され、βアラニンとヒスチジンという2つの単体のアミノ酸に分かれます。
このアミノ酸は血液中を移動して、脳血管関門を通過することができます。そして、脳の自律神経中枢に到達したのち、再度ジペプチドの形へと再合成を行うことによって、自律神経中枢での抗酸化作用を発揮します。

活性酸素からの自律神経中枢のダメージを抑制することで、疲労回復効果を発揮するのです。
これらの作用機序はポリフェノールなどの高い抗酸化作用のある物質では確認されていないことも、イミダゾールジペプチドが特に疲労回復に良いといわれる理由です。

イミダゾールジペプチドの摂取効果

疲労回復効果を感じている女性

イミダゾールジペプチドは、イミダゾール基を含むアミノ酸が結合した成分の総称です。
イミダゾールジペプチドとしては、他にもアンセリンやカルノシン、バレニンなどがあります。

そのなかでも特に、アンセリンとカルノシンが古くから知られていて、アンセリンは1929年、カルノシンは1900年に発見されたといわれています。

近年、疲労の度合いを数値化できるようになったことや、高い精度で抗酸化力を測ることができるようになったこともあり、アンセリン・カルノシンについて、それぞれの研究が進展してきました。

それにより、アンセリンやカルノシンは人間が経口にて摂取したあと、単体のアミノ酸にまで分解され体内でカルノシンへと再合成し、抗酸化作用が発揮されるという機序も明確になりました。

現代では、これらイミダゾールジペプチドの経口摂取によるエビデンスが多岐にわたって発表されてきており、主に疲労の軽減、持久力の向上、運動パフォーマンスの向上、酸化ストレスの軽減など、疲労回復や運動機能に関連したものが数多く研究されています。

さらには、機能性表示食品としての市場製品も数多く展開されていることから、そのエビデンスレベルの信頼性の高さも伺えます。

これらの効果から、働き盛りのビジネスマンやアスリート向けのサプリメント設計はもちろんのこと、加齢によって疲労回復能力や抗酸化機能が衰えてきた高齢の方の運動能力低下抑制に向けたサプリメント設計を行い、販売することも可能です。

また、長期連用や過剰摂取による安全性試験も確認されている成分のため、安全面の心配が少ない成分であることも特徴の1つです。

文献:日本補完代替医療学会誌 第 6 巻 第 3 号 2009 年 10 月:123–129

イミダゾールジペプチドを含む食品と摂取量

イミダゾールジペプチドを含む食品

イミダゾールジペプチドは、身近な食品である鶏肉や牛肉、豚肉、マグロ、カツオなどに含まれています。
特に鶏胸肉に多く含有されていることから、ごく微量ながら食物からも摂取をすることが可能です。

しかし、それら食肉や魚肉などの食物から摂取したイミダゾールジペプチドでは、体内でそれら全てが吸収されるわけではなく、一部しか吸収できないといわれています。
さらに、前述した疲労回復や運動パフォーマンス向上などの効果を期待するためには、イミダゾールジペプチドを1日あたり200mg~400mgほど摂取することが推奨されています。

この推奨された量を食品から摂取するのは非常に難しく、タンパク質の摂取量が増えてしまうことにより、食生活が偏ってしまい、生活習慣病への罹患など健康被害を被ってしまうかもしれません。

そのため、イミダゾールジペプチドを効率よくかつ効果的に摂取するためには、サプリメントからの摂取がおすすめです。

まとめ

今回は近年疲労回復商材として注目を集めているイミダゾールジペプチドについてご紹介しました。

イミダゾールジペプチドは渡り鳥が長距離を飛び続けるメカニズムの研究から判明した疲労成分です。
イミダゾールジペプチドの効果は主に

・疲労の軽減
・持久力の向上
・運動パフォーマンスの向上
・酸化ストレスの軽減

などがあげられます。
イミダゾールジペプチドは鶏胸肉などに多く含まれていますが、毎日定期的に摂取するには食品よりサプリメントが効果的です。

Held(ヘルト)では、様々なニーズに合わせたサプリメントの企画・開発・製造のサポートを行っております。
イミダゾールジペプチドのサプリメント開発をご検討の際はぜひお問い合わせください。

 

 
管理栄養士、博士(生物環境調節学) 千葉 大成

■監修

管理栄養士、博士(生物環境調節学)、専門は栄養生理学 千葉 大成

■人々の健康のために

 東京農業大学大学院博士課程修了後、国立健康栄養研究所、大学研究機関で、食と健康に関わる研究活動および教育活動に18年携わってきました。研究活動としては、機能性食品素材に着目した骨粗鬆症予防に関する研究を主に行ってきました。一方で、教育活動の傍ら、地域貢献セミナーや社会人教育にも携わってきました。
 そういった研究・教育活動から疾病をいかに予防するかを考えるようになりました。つまり、薬剤で“病気にフタ”をすることで病気を抑えることよりも生活習慣(食事、運動、サプリメント)で“病因を流す”ことによって疾病を予防していくことを積極的に働きかけていきたいと考えるようになりました。

■略 歴

2000年東京農業大学農学研究科博士後期課程修了後、2018年まで大学教育研究機関で主にフラボノイドによる骨代謝調節に関する研究に従事した。