Column
投稿日:2024年9月1日/更新日:2024年8月29日
《海藻の機能性成分には多くの健康効果がある》
最近の新型コロナウイルスの蔓延やインフルエンザの流行などで、以前よりも感染症への対策の重要性がますます高まっています。
そんな中、感染対策と同様に、免疫力を高めることが重要になっています。
海藻に含有されるフコイダンは、硫酸多糖類の一種でコンブやワカメ、モズクなど褐藻類の粘質物に多く含まれる食物繊維で、免疫力増強作用や抗コレステロール作用などが報告(山田信夫 海藻フコイダンの科学 (株)成山堂書店(2006))されています。
以前からフコイダンの機能性ついて知られており、発見されたのは1913年とされます。
また、日本では海藻は弥生時代から摂取されており、沖縄では琉球王朝時代より、薬膳料理に使用される食材としてもモズクが重用されていました。フコイダンの効果としてよく知られているものとしては「免疫力強化作用」「アポトーシス効果」「血管新生阻害作用」があります。次項目以降で詳しく解説いたします。
《フコイダンの免疫力賦活能力》
私たちの体内には免疫を担う細胞があります。この細胞は外部から侵入してきた細菌やウイルスなどの病原体と戦います。
また、外部から侵入してきた病原体だけでなく、体の内部から発生した癌細胞などの異常な細胞を攻撃するという役割も持っています。体内の免疫を活性化させることで、外部から侵入した病原体のみならず、癌などの腫瘍性の疾患にも予防的に働きます。
フコイダンは昆布、ワカメ、ヒジキなどの褐藻類に属する海藻より抽出され、硫酸化フコースを基本構成糖とする多糖類の総称で、起源とする海藻によってその構造が異なることが知られています(酒井ら、バイオサイエンスとインタストリー(2002), 60:23-26)。
また、ガゴメ昆布由来のフコイダンにはこれまで、免疫賦活作用や抗腫瘍作用、抗インフルエンザ作用、血栓抑制作用など多様な効果が動物試験によって明らかになっています(水谷ら、New Food Industry (2008), 50: 22-34、大野木 Food Style 21 (2011), 15: 43-45)。
さらに、カゴメ昆布フコイダンが高齢者に対して安全性の高い機能性食品素材であることも報告されています(鈴木ら、日本補完代替医療学会誌 (2012), 9(2); 149-155)。
《フコイダンのアポトーシス効果》
人間の体は莫大な数の細胞から成り立ち、その数は60兆個にもなります。この細胞は日々新しく生まれたり、死んだりして入れ替わりながら数を保っています。
細胞はある程度古くなると自ら死を選び、古い細胞が際限なく増えて体の機能に支障をきたさないように調整されています。この計画的な細胞死をアポトーシスといいます。アポトーシスができなくなると古い細胞が死ななくなり、無秩序に増殖してしまい、このような細胞がん細胞とよばれる細胞になります。
アポトーシス効果はこれらの細胞にアポトーシスをもたらして無秩序な細胞増殖を抑えるという役割があります。
正常細胞とがん細胞に対し、フコイダンを加えて観察したところ、がん細胞だけを特異的に自滅させ、正常細胞には全く影響を与えないことが報告されています(Zhang Z. et al., PLoS One (2011), 6(11): e27441) 。
さらに、フコイダンによってマウス大腸癌細胞の発育が抑制されたことも報告されています (石渡ら, 静脈経腸栄養 (2007), 22(4); 489-492) 。フコイダンによるアポトーシス誘導は、ガン細胞を死滅させる場合にのみに限られており、正常な細胞は死滅されないという点が非常に理想的なガンの治療法であると注目されています。
《フコイダンの血管新生阻害作用》
血管新生とは癌細胞が増殖する時に起こる、新たな血管の産生のことです。癌細胞は無秩序に増殖するため、非常に多くのエネルギーを消費します。このため栄養や酸素を自らに供給するための血管を作る作用があります。この血管新生に関わる物質がVEGF(血管内皮細胞増殖因子)です。
このVEGFという物質の発言を抑えることでがん細胞に対して栄養や酸素が供給されることを防ぎ、がんの増殖に対して抑制的に働くのです。
フコイダンを虚血前後投与すると、下肢虚血モデルにおいて血流の改善効果が有意に促進され,その効果の一部に毛細血管新生の促進が関与することが報告されています(野津ら, J Yonago Med Ass (2018); 69, 16-24)。さらに、子宮がん細胞にフコイダンを加えて、VEGFの量を分析したところ、フコイダンを加えないものと比べ、有意にVEGFの発現を抑えていることも報告されています(Ye J., et al., Cytotechnology (2005); 47(1-3):117-126)。
このように、血管新生はがん細胞が血管の成長を促進するVEGFを分泌することによって起こりますが、フコイダンを癌細胞に作用させると、VEGFの発現を明らかに抑制している働きが分かってきています。
《まとめ》
以上のようにフコイダンはがんに対して抑制的に働く作用を持っており、注目されている健康成分なのです。他に期待される効能としては傷の治りを早める作用や、抗凝固作用、コレステロール低下作用、抗酸化作用などがあり、研究が進んでいます。
では、理想的なフコイダンの摂り方について考えてみます。フコイダンの摂取量の目安は1日200-1000mg(原末によって推奨量が異なる)程度が目安とされています。これはモズク酢やひじきの煮物で換算すると40g程度になります。大体1パック取れば必要量を摂取できます。
おでんの昆布でも取ることはできますが煮汁の中に出てしまうので、含有量は大きく減少してしまいます。また、スーパーなどで売っている海藻サラダなどで一度乾燥して戻しているものに関しては残念ながらフコイダンはほとんど含まれていません。焼きのりも同様に含まれていません。
以上から1日1000mg摂取する場合はモズク酢のような形で摂取するのが最も効果的と言えます。毎日モズク酢を食べるのは難しいという方はサプリメントで摂取するのも効果的です。サプリメントのフコイダンは人体により吸収されやすい形になっているのでより効果的に体に取り入れることができ、摂取にも時間がかかりません。
今回は海藻由来の健康成分であるフコイダンについて解説していきました。癌に対して抑制的に働くなど多くの健康に良い作用を持つ健康成分であるフコイダンは食品からも摂取できますし、サプリメントなども使用して手軽に取り入れることで、健康寿命を伸ばしていきたいですね。